
迫りくる、世界のタンパク質不足
国連の発表によると、世界の人口は2050年までに20億人増える見通しである。人口増加に従い食糧や水が不足する可能性があり、その中でもヒトにとって欠かせない栄養素の一つであるタンパク質の不足は重大な問題だ。
リサーチ会社Lux Researchが発表した資料によると、2050年までに不足するタンパク質の総量は1500万トンで、畜産業(牛・豚・鶏など)や水産業(魚)からの供給では到底間に合わない。
新たなタンパク質の供給源はすでに研究・開発されており、その中でも有力なのが昆虫からのタンパク質摂取だ。
虫バターで作る美味しいお菓子はいかが?
ベルギーにあるゲント大学の科学者グループは、昆虫食の研究を行っている。その研究内容は、ワッフルやケーキ、クッキーに使われるバターを、虫の幼虫からとった脂肪で代用するといったものだ。虫バターは乳製品に比べて作り出すのが簡単で、地球にやさしいエコな食品であり、外観も生乳から作られるバターと比較して何ら変わりない。
使用される虫は、アメリカミズアブ(英名:Black Solider Fly, BSF)というハエの一種。虫バターの作り方は簡単だ。ハエの幼虫を水に入れて、ミキサーで粉々にした後、家庭用の分離器で脂肪分を取り出すだけで出来上がる。
動画は虫が出てくるので閲覧注意です
虫バターで実際にお菓子を作ってみたらどうなるのだろうか?動画の中でデイラン博士はオーブンから焼き立てのバターケーキを出してきた。見た目はいたってふつうである。

研究によると、虫バターを25%使ったケーキでは、誰も味の変化に気が付かない。しかし、50%まで比率を高めると、変な味がしてそのケーキを食べたくなくなるそうだ。
虫バターにはメリットがたくさん!
デイラン博士は自信を持って言う。
「虫バターにはいくつものメリットがあるのです。乳製品のバターを作るには、牛を飼わなければなりません。それには広大な土地が要ります」
「また牛のミルクからバターを作るのにいくつもの複雑な工程が必要で、大量の水が必要になります。それに比べて虫バターはずっと少ない資源で、かつ簡単に作れるのです」
他の昆虫に比べ圧倒的に優れたBSFの特徴
BSFが他の昆虫より食用に優れてる点は、以下に挙げられる。
- 他のハエと違い、伝染病を運ばない
- 有機物を食べて糞をすることで、栄養分を土にもたらす
- 繁殖が速い(ふ化してから卵を産むまで6週間、1度に500個の卵を産む)
- すでに家畜の飼料として実用化されている
- 幼虫は高タンパク質(体組成のうち43%)
- 焼くとポテトの香りがし、味はナッツ、感触は柔らかい肉に近い
- 飼育スペースが小さくて済む(車1台の大きさの保育器で1トンの幼虫が育てられる)
BSFの食用研究の完成が待たれる
すでに経済的に大量生産する技術は確立しているBSF。味の問題をクリアすればバターだけでなく、肉の代用品としての研究も期待される。近い将来、 気付かないように加工されたBSFを私達も食べているかもしれない。
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参考:
United Nations World Population Prospects 2019
Lux Research
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