
地球全体で問題になっている温暖化は、地表の98%を氷に覆われた南極でも例外なく起きている。
南極で起きている局地的な温暖化
南極は最も温暖化が進んでいる地域の一つである。1989年~2018年の過去30年間で平均気温が1.8度上昇している。これは世界平均の上昇率の3倍だ。
しかし全体的に温暖化が進んでいるという訳ではない。

南米大陸に近い西南極は温暖化の進行が速く、過去50年間で2.5~3度気温が上昇している。2020年2月には最高気温18.5度を記録した。
一方、オーストラリア側の東南極では温暖化はみられず、南極点のある内陸はむしろ寒冷化しているのである。
なぜ西南極だけ温暖化が進んでいるかについては諸説あり、未だ研究対象になっている。
西南極の氷床が解けるのは風による影響も大きかった

西南極の地表を覆う氷床は融解が速い。全て融けると世界の海水準を3メートル以上上昇させる。
氷床の融解は温暖化によるものと考えられていたが最近の研究では風の影響も大きいことが分かった。
温暖化の影響に西熱帯太平洋の気温が上がり、西南極に以前より強い西風(西の方角から来る風)が流れるようになった。
西風に伴い、温かい海水も西南極に運ばれる。氷床が解けると冷たい水が氷床の周りに停滞し、氷床の解けるスピードが遅くなるが、この温かい海水が常に流れてくることにより氷床は解け続けるのだ。

ちなみに東南極では逆に氷床が大きくなる現象が起きる。
流れてきた温かい海水が南極付近で蒸発し、大気中の水分量を増やす。それが雲になり東南極で降雪をもたらすのだ。
氷床の融解は進んでいるのに海氷は増えている

また氷床は融解しているのに対し、海の上に浮かぶ海氷は増えるという奇妙な現象も起きている。
これは温暖化によって南極周辺を循環する風が強くなり、すでにある海氷を押し回してポリニヤをできやすくするからだ。
ポリニヤとは海氷の一部が開き海面が現れている場所で、海水面が寒冷な空気と接すると新たな海氷ができていく。
複雑な南極の温暖化
以上を総合すると、南極が温暖化しているので氷が減って海水面が上がるという単純な話ではない。しかし全体的な傾向として南極で温暖化が進んでいるというのは事実なのだ。
参考元:
Science Daily
General overview of polar warning issues by Takashi Yamanouchi
Wired.jp
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