20世紀の負の遺産。チェルノブイリの「象の足」を探る(旧ソ連)

 放射線影響や核燃料の最終処分、重大事故など、原子力発電にともなうリスクは一般に広く周知されている。とりわけ放射線汚染による健康被害は2011年の福島第一原子力発電所事故以降、頻繁に議論の的になってきた。

 原発リスクを世界中に知らしめた事件として、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故ほど有名なものはないだろう。

 30年以上もの時が経過してなお、事故現場には深い爪痕が残っている。大量の放射線を放つ巨大なコンクリートの塊「象の足」はそのうちのひとつだ。

チェルノブイリ原発事故、「象の足」ができるまで

 1986年4月、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で20世紀最悪の原発事故が起きた。安全試験中に原子炉が暴走して爆発したのだ。

 爆発により建物は崩壊し、周囲には大量の放射線が漏れ出した。 発電所で働いていた職員たちは数週間以内に死亡し、そのほかにも多くの近隣住民たちが後遺症を抱えることになった。

photo credit: All thats interesting

 たとえば、チェルノブイリ原発のもっとも近くの村プリピャチでは、約五万人もの人々が高レベルの放射線にさらされた。村の住民たちは強制避難を強いられ、事故により今もなお苦しめられている。放射線汚染の影響で癌などの健康被害をうったえる者も多い。

 事故の影響による強制移住等を含めると総被害者数は数十万人以上にものぼる。

 原発事故から約8ヶ月後、遠隔カメラを使用して現場の調査をすすめるさなか、爆発を起こした原子炉の直下で大量の放射線を放つ塊が見つかった。約2メートルの大きさの塊は、シワのよった形状から「象の足」と名づけられた。

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「象の足」を探る研究

 「象の足」は原子炉が融解すると発生するものだ。核燃料、砂、コンクリート、ウランの混合物などが混ざり合ってできており、事故当初は約8,0グレイ毎時もの放射線を放っていた。これはたった数秒近くに居るだけで確実に死に至る放射線量だ。

 チェルノブイリの地下は想像を絶する危険区域だったのだ。事故処理のためリクビダートルと呼ばれる作業員たちが派遣されたが、被曝によって寿命を縮めてしまった。

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 現在、「象の足」の放射線量は事故当初から大幅に減っているが、それでもまだ付近に近づくのは危険である。

 今後、原子力発電所で同様の事故が起こった時に「象の足」ができるのをいかに防ぐかを知るためにも、研究を続ける必要がある。

 そうした思いを抱いた研究者たちは、健康を損なうことなく研究をつづけるため、象の足のレプリカを作りだすことにした。

 2020年、英国のシェフィールド大学のチームは、弾丸の生産に使用される劣化ウランを使用して、象の足のミニチュアを開発することに成功した。放射線量がずっと少ない材料でレプリカを制作したのだ。

 本物の「象の足」そのものではないためレプリカでの研究には限界があるが、研究者たちの挑戦は続いている。

 今もなおチェルノブイリにのこる負の遺産である「象の足」。人類が産み出してしまった負の遺産について知ることは、放射線汚染が引き起こす悲劇を防ぐための一歩となるはずだ。

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引用元:
That's all interesting

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