
ベルギーのフィリップ国王は2020年6月30日、コンゴ民主共和国のフェリックス・テセケディ大統領に宛てた手紙の中で、同国の過去の植民地支配下で残虐行為があったことを認め「深い遺憾の意」を表明した。
ベルギー王室のメンバーが、植民地時代におけるコンゴでの大量虐殺を認めたことはこれまで一度もなかった。
これはコンゴ民主共和国の独立60周年と重なり、歴史的な出来事となった。
レオポルド2世(ベルギー2代目国王)が犯した大罪とは
19世紀、ヨーロッパの帝国主義による植民地支配が大規模に行われ、アフリカの80%以上はヨーロッパ諸国に占領されていた。
ベルギー国王レオポルド2世(在位1865〜1909年)は列強の手に及んでいないアフリカの中心部、コンゴに目を付け「コンゴ独立国」と称し私領地にした。
レオポルド2世はアメリカやヨーロッパの主要国に対し「コンゴを西洋化し文明を発達させることができる」と自分自身をまるで救世主のように見せていたが、実際は象牙やゴムといったコンゴの豊かな資源を搾取するのが目的であった。
資源を回収するためにレオポルド2世が行ったのは、地元の人々に回収ノルマを課せて奴隷のように働かせることだった。
逃亡しようとした者や反乱を起こした者には手首を切断するなど残虐行為も行われていた。
殺害や過労で人々は死んでいき、1880年から1920年のわずか40年間のあいだに人口は2000万人から1000万人に半減した。

過去の歴史は現代にもつながっている
アフリカ系のジョージ・フロイド氏が白人警察に殺害された事件をきっかけに過熱している米国のBLM運動( Black Lives Matter )を受けて、ベルギーでは過去の植民地支配における問題が議論になっている。
コンゴのフェリックス・テセケディ大統領に宛てた手紙で以下のようにつづっている。
過去の傷について遺憾の極みと伝えたい。私たちの社会にいまだ存在する差別によって、その痛みがよみがえっています
フィリップ国王はベルギーの最高代表であるだけでなく、レオポルド2世の遠縁の甥でもあるのだ。

手紙を受け取ったテセケディ大統領は以下のように述べた。
私は両国の歴史家による科学的な研究に基づいて、コンゴ民主共和国の子供たちやベルギーの子供たちに事実を伝える必要があると考えています。
しかし両民族は歴史の汚名を越えて、強固な関係を築くことができました。将来のために最も重要なことは、ベルギーとの調和のとれた関係を築くことです。
負の遺産を残すか、撤去するか
7月初め、アントワープにあるレオポルド2世像が反人種差別のデモ隊によって取り壊された。ブリュッセルにある別の像は、落書きでペンキで汚されている。

ベルギーに住む14歳の少年ノア君は、ブリュッセルのレオポルド2世の像を撤去するために、数万人の署名を集めて請願書をベルギー政府に提出した。
この歴史を知らない人がまだ大勢いる。
否定する人や、何が起きたのか理解できない人もたくさんいる。 真実を見つけることが非常に重要なんだ。手遅れになることはない。

こうした国民の動きによりベルギー議会は積極的な措置を取り始めた。
議員のヴァン・フーフ氏は、国の植民地時代の歴史についての調査を承認したのだ。
しかしベルギーでBLM運動を行うジョエル・サンビ氏は「私たちは本当の謝罪を求めている。手紙を読むことなんて望んでいない」と抗議している。
ヴァン・フーフ氏は次のように語っている。
謝罪しなければならないのは王だけなのでしょうか?
王だけでなく、実際にコンゴで虐殺を行ったベルギー人らも謝罪をすべきではないでしょうか?